新しいモバイル時代をつむぎ出す担い手たち。このコーナーではモバイル商品や技術の開発者たちに迫ります。
商品や技術の後ろには、その何百倍もの開発者たちの夢が託されている…。
夢こそがこれからのモバイルの世界を広げます。彼らの夢に迫ると、もっとモバイルの世界が深まります。


 

 

 

 


第二回 〜産学共同プロジェクトから生まれた(6つの)情報通信端末(モバイル)コンセプトデザイン〜

 

      東芝デザインセンター 松本潤

 

「産学共同プロジェクト」その企画は、東芝デザインセンター・松本潤の「企業の発想ではなくそれを使う、使いたいユーザーからの発想によるモノ作り」というテーマから始まった。

早速、学校探しからスタート。探していたのは15歳〜20歳までの若者が学ぶデザイン系の学校。
そして白羽の矢が当たったのが、育英高専だった。


プロジェクト参加メンバー
編集部は早速、このプロジェクトに参加した学生達に話を聞きに行った。
プロジェクトへの意気込みとは?こだわりとは?そして苦労話とは?学生達の本音を直撃!
今回話を聞かせてくれたのは、吉川晴奈さん(5年生/プロジェクター端末)古川順一郎さん(4年生/音楽端末2)小柳ヒカルさん(4年生/ダイエット端末)永岡悠作さん(4年生/音楽端末1)鈴木明莉さん(4年生/ナビゲーション端末)重浦朝太さん(2年生/音楽端末3)


最初は喜びそして戸惑い

「先生から話を聞いた時、すっごく嬉しかった」というのが皆の第一の感情。そして「何をやるんだろう」という戸惑い。スタートしてからは「全てが始めての経験だったし、毎週一回打ち合わせがあってちょっとうっとうしかった(笑)」でも、先生にこいつは出来ないやつだって思われたくないというプライドから会議の前日は泣きながら、学校に泊り込みで徹夜作業、当日は授業中に先生の目をぬすんで必死に作業したという。
打ち合わせ風景

最終段階では「自分の考えたデザインがモック(模型)化して、手にもったときは、うわぁーっと感動した」と、苦しかったからこそ喜びも大きかった。
プロジェクトが終了して、4ヶ月たった今の感想を聞いてみると、普段、話す機会のないプロのデザイナーや他の学年の人たちとの密なコミュニケーションができたこと、刺激を得られたこと、モノができあがっていく過程を体験できた。などなど楽しくそして勉強になったと、ひとつのことをやり遂げた人特有のすがすがしい表情をしていた。
自分が欲しいものを作ったと自信を持って断言する彼ら。なるほどどの端末も力作で思わず「そうそうこんなのが欲しかったんだ」と叫んでしまった。
それでは、彼らがデザインした端末を紹介しよう。


引っ掛けて持ち運ぶ!クルクルできる!リズムにのれる音楽端末


音楽端末1をデザインした永岡悠作さん
まず、トップバッターは永岡さん。
永岡さんは、モバイルにはあまり興味がなかったという。だからまずモバイルってどういう感じのものなのということからスタートしたそうだ。
自分の満足する形がなかなか決まらなくて、それを探すのに一番苦労したと言う。
永岡さんのデザインのスタイルはユニークで、スケッチをおこすのではなく、いきなり粘土を使うのだそうだ。
粘土をいじながら、ボタンの位置など言葉や絵で補えない細かいところは手の触感で確かめながら創作した。
彼のこだわりは、見せるデザイン、そしてフィット感。スマートで流線型、指を入れてクルクルまわせるという点だ。


音楽端末1の使用シーンイメージ


迫力サウンドと軽快モバイル、気分によって使い分けする音楽端末


音楽端末2をデザインした古川順一郎さん (左)と荒川太輔さん(右)
次は、古川さん。今回は話を聞けなかった荒川太輔さんとの共同デザインだ。
古川さんは、基本的には「自分達が欲しいもの」ということを大前提にしてこのプロジェクトを進めていった。
授業で造形イメージの創作は数多く経験したが、その商品がどういう機能をもっているか、使ったときにどういう感じになるかまでを考えたデザインは初めての経験だったと言う。
特にボタンの位置が端末のデザインには重要だということに気づき、人一倍こだわったと言う。デザインは面白ければいいってもんじゃないんだと分かったそうだ。古川さんも永岡さん同様、見せるデザイン、フィット感へのこだわりは大きかった。
バックの中にしまうのではなく持っていることを見せたい、「なんだろう、あれ、何使っているんだろう、あの人」と周りの人に思わせたいという古川さんの思いが伝わってくるデザインに仕上がっている。


音楽端末2の使用シーンイメージ


回転式スピーカーが決め手!手にフィットする2つ折りタイプの音楽端末


音楽端末3をデザインした重浦朝太さん
次いで今回のプロジェクトメンバーの最年少、重浦さん。
重浦さんは、2年生ただ一人の参加ということもあり、最初は「俺、やっていけるのかな」とギャップを感じていたそうだ。
それに追い討ちをかけるように、出す案がことごとく却下され、かなりへこんだと言う。
それを持ち前の明るさ、感性の鋭さで乗り越えた。
重浦さんは、毎日100件ものメールを送る程のメール好き。日頃からテンキーボタンの使いにくさを肌で感じていた。
親指ひとつで使いやすく、全ての機能を使いこなせるようにしたかったという。
常に意識していたのは、親指ボタン、回転式のスピーカー、流線型のフォルム、アクセサリー感覚という点だ。
端末を閉じているときも音楽が聞きたいというこだわりから生まれたのが、回転式スピーカー。
時にはキーホルダー、時にはネックチェーンといった使い方を想定し、手に馴染む流線型のフォルムでまとめた。


音楽端末3の使用シーンイメージ


「見る」「書く」「撮る」用途によって使い分け、スリムボディと便利な回転式グリップ


ナビゲーション端末をデザインした
鈴木明莉さん
最後は、鈴木さん。
鈴木さんは、事前アンケートでも最もニーズが高く、自分も欲しかったナビゲーション端末を担当した。
どんなコンテンツにするか、どういう機能が欲しいかなどアイディアはたくさん思いついたと言う。だた、それをすぐにデザインに反映することが出来ず悩みに悩んだそうだ。「画面は大きい方がいい、でも大きいと持ちにくい」などなどギャップに苦しんだ。最終的には歩きながらの持ちやすさ・見やすさという点を大前提にデザインを考えたという。
その結果、コンパクトにしまえるという点は成功したが、本当に持ちやすいか・操作しやすいかなど、まだ伝え切れないものが有ると感じているという。
そんな鈴木さんのこだわりは、回転式の取っ手だ。使うときは取っ手を使いやすい角度にして握る、しまうときは回転させてスリムに収納と、一つの端末で形が変わって楽しみが2倍になるという点だ。


ナビゲーション端末の使用シーンイメージ

モックまでたどりつかず、今回は涙をのんだプロジェクター端末担当の吉川さん、ダイエット端末担当の小柳さん、また、前半に参加した渡辺加奈さん(3年生)は今回紹介した端末以上に悩み、苦しんだことだろう。これで終わりにすることなくこれらの端末の今後に期待したい。


時代を担う若手デザイナー達の今後に期待

デザインを専攻する学生が、自分達の本当に欲しい端末を自らの手で作り上げた情報通信端末。今回はコンセプトデザインに終わったがいつの日か商品化する事が、東芝デザインセンター・松本の夢である。

 

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