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2015年に「女性活躍推進法」が制定されるなど、女性が活躍できる環境を整えることが企業の取り組むべき課題となった現代。そんな状況の中、「ウーマノミクス」という概念もたびたび取り上げられるようになりましたが、多くの場合、それらは経営層・人事部が担当すべき領域だと考えられてきました。
しかしながら、各企業で具体的な施策が整備されつつある今、情報システム部門の担当者にとっても、これから決して他人事ではなくなることが予想されます。
今回は「情報システム担当者が知っておくべきウーマノミクス」の前編として、東洋大学准教授の小島貴子さん監修のもと、女性活躍に関する現状や課題について整理し、情報システム担当者として何をすべきかについて探っていきます。
多様性キャリア研究所所長、東洋大学理工学部生体医工学科准教授、キャリアカウンセラー。
埼玉県庁にて職業訓練生の就職支援を行い、7年連続で就職率100%を達成する。その後、多数の企業で採用・人材育成コンサルタント及びプログラム作成と講師を務める。埼玉県のウーマノミクスプロジェクト推進活動のアドバイザリーメンバー。
「ウーマノミクス」とは、Women + Economicsの造語であり、ゴールドマン・サックス証券のチーフ日本株ストラテジストであるキャシー・松井氏が1999年に提唱した概念。社会における女性活躍をもって、経済活性化を目指すものです。より具体的に言い換えるなら、「女性が働き、収入を得て、経済活動の主体者になる」ということになるでしょう。女性たちが長く働き続けたい、または復職したいと思える社会になれば、消費は拡大し地域経済が活性化します。そんな好循環を生み出す「ウーマノミクス」が、これからの社会に求められているのです。
今後の日本経済を支えるキーワードとなる「ウーマノミクス」。ただし、トップダウンで「女性に活躍の場を!」という理念だけを持ち込んでも、個々人の感覚としては受け入れにくい場合もあります。現場の状況や、女性たちの現実的な希望や意欲と乖離しているのが問題。個別の具体的な問題として取り組み、柔軟に対応していく必要があるのです。
※各グラフは画像をタップすると拡大します。
総務省「国勢調査」(年齢不詳人口を除く)(2015)、
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」
(出生中位・死亡中位推計)(2012)の総務省「平成28年版 情報通信白書」(2016)引用より作成
ウーマノミクスが注目される理由は、まず労働人口の問題にあります。少子高齢化の影響で、日本の生産労働人口(15~64歳)は1995年を境に減少傾向にあり、今後はさらに大幅な減少が見込まれています。そのため、企業の人材確保は年々難しくなることが予想されるのです。
そのような状況の中で、女性の労働力に注目が集まっています。女性の潜在的労働力率(※)を見てみても、20~49歳においては実際の就業率に比べて10~15%程度高くなっているのです。人材不足解消における一つの鍵を握っていると言えるでしょう。
※潜在的労働力率…(就業者+完全失業者+就業希望者)/人口(15歳以上)
長時間労働と「働きパフォーマンス」で仕事を評価する時代は終わり、これからは結果が求められる時代です。労働は、AI(人工知能)に取って代わられる部分が多くなることもあり、人間の個性、能力や発想が必要とされるクリエイティブな仕事が増えるでしょう。そういった仕事は、時間や場所を制限されない働き方に向いています。そこで特に注目が集まるのが、結婚や出産などで仕事を辞めた女性たちの再雇用。個々のライフスタイルに即した勤務形態を実現し、働く女性のロールモデルを作り上げることが必要なのです。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング「両立支援に係る諸問題に関する総合的調査研究」(厚生労働省委託)(2008)
の内閣府「平成24年版 子ども・子育て白書」(2012年)引用より作成
しかし現状では、女性は男性に比べて働き続けるのが難しい状況にあります。結婚や出産といった「ライフステージの変化」を機に仕事を辞める女性が多いのです。
ただ、その内実を見ると「家事・育児に専念したい」と自発的に離職する女性が多い一方で、仕事を続けることを希望しながら「家事・育児との両立が難しい」と判断して辞める人も少なくありません。
また近年は、優秀な女性たちほど、男性優位な日本の企業風土のなかでは将来が見通せないと考え、東南アジアなどの海外に活躍の場を見出すという傾向も伺えます。
女性たちが職を離れる事情はさまざまであり、だからこそ企業の幅広い支援が今後さらに求められるのです。
具体的に企業が行うべき支援としては、産休・育休などの制度はもちろん、労働時間の短縮やフレックスタイム、在宅勤務(テレワーク)といった多様な働き方ができる環境作りが挙げられます。このようなフレキシブルな就業形態を導入することは、家庭内の支援として夫が家事・育児に参加するためにも検討されるべきでしょう。
正規/非正規という雇用の分け方をなくして、雇用形態でハンデが生まれないようにすることでも、女性が活躍できる機会は増えるはず。そして企業には副業をOKとすることも検討していただきたいですね。そうすることで在宅勤務や短時間業務の可能性はさらに広がるでしょう。また社会に強く根付いている、家事や子育てを家庭のなかで完結させることを美徳とするような風潮も女性の足かせになっているのでは。子育てだってアウトソーシングしてもいい。家事代行など、共働きを支えるサービス業の発展が望まれます。
多様な働き方の象徴として、在宅勤務(テレワーク)が挙げられます。株式会社インサイトイメージの調査による「働き方改革白書(2016)」(※)では、「テレワークを活用したい・活用している」と答えた人 はその理由として、在宅のため育児や介護などと両立しやすいことや、通勤にかかる時間が削減できることなどを挙げています。通勤による時間のロスがないこと、働く時間を自分で決められることは、女性にとっては非常に大きなメリットです。
※調査対象者:全国の企業に勤務している方のうち、従業員数100人以上の会社にお勤めの方700人
また、在宅勤務は企業にとって、通勤手当や残業手当、広いオフィスにかかる賃料などのコスト削減にもつながります。女性のためにという前提ではなく、双方の利益になる制度をつくるという発想なら、どんな企業にとっても取り組みやすいのではないでしょうか。
テレワーク制度の有無および活用への意識を見ると、大企業ほど制度が整備されていることがわかります。労務に関する多くの制度が大企業を中心に始まり、その後に中小企業にも波及していくケースが多いことから、今後、より多くの企業がテレワーク制度を導入していくことになると予想できます。
また、すでに導入済みの企業ではその効果検証も行われ、よりテレワークの精度を高めるべく、社内の各セクションによる総合的かつ細かな見直しが進んでいくことでしょう。テレワークが本格的に活用される時代がまさにいま始まろうとしています。
テレワーク導入にあたって情報システム担当者に直接的に関わってくる課題としては、社員の使用するデバイス選びが挙げられます。「テレワークを活用したい・活用している」と答えた人に聞くと、テレワークでは会社と自宅の間や自宅内などでデバイスを持ち歩くことが多いので、その機能性として「軽く、持ち運びがしやすい」「バッテリーの持ちが良い」ことが求められています。また、場所を問わず効率よく作業するために、CPUの性能が重視されているのもポイントです。
私自身も、ノートPCがあればどこでも仕事ができる環境が整いつつあります。そこで個人的に重視するのは、軽さと処理速度。どこでも効率良く仕事をするためには、持ち歩きたくない重さや起動と処理速度の遅さは致命的です。テレワークにあたっては、軽量で高性能CPUを持ち、セキュリティに安心感のあるデバイスが欠かせません。
ここまで「ウーマノミクス」についての基礎的な知識や背景、そして情報システム担当者がすべきことについて見てきましたが、後編では実際に企業に勤めている女性の方々にご登場いただき、座談会という形でリアルなお話を伺います。
※Intel、インテル、Intel ロゴ、Intel Core、Core Inside、Intel vPro、vPro Inside、Thunderbolt、Thunderbolt ロゴ は、アメリカ合衆国および/またはその他の国における Intel Corporation の商標です。